こんにちは。ブログを閲覧していただきありがとうございます。
さて、今回は少し趣向を変えて、確率の話をしていきたいと思います…というと、いつもと同じ勉強の話になってしまいますので、おなじみの方も多いであろうソーシャルゲーム(通称:ソシャゲ)のガチャを題材にしていきます。
念のためにガチャについてご説明しますと、一言でいえば、ランダムにゲーム内アイテムが手に入るシステムのことです。基本無料が多いソシャゲにはたいてい実装されています。
昔から何かと批判の的になりやすいシステムです。射幸性を煽り、未成年にギャンブルをさせているというのがその最たるものですね。海外では政府が規制に乗り出している国もあります。アメリカや欧州などで特に議論が盛んですね。
ただ、ここでは、あえてガチャ自体の良し悪しは置いておいて、「結局ガチャが当たる確率はどれくらいなの?」という話をやっていきたいと思います。よく爆死だとか、そうじゃないだとかいう話を耳にしますが、具体的に何回くらい回せば当たるのか?これを数学的に考えていきたいと思います。
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さて、早速ガチャの話をやっていきたいのですが、その前に必要な知識の解説を行っていきます。結論だけ見てもあまり面白くないと思うので、少しだけお付き合い下さい。(反復試行や余事象という言葉の意味が理解できている方は飛ばしてもらって大丈夫です)
例として、コイン投げを考えてみましょう。一回コインをポイッと投げて、表と裏が出る確率。これは確率というモノをまだ学んでいない方(あるいは忘れてしまった方)もなんとなくわかると思います。変な投げ方をしない限り、表と裏の出る確率は等しいので、1/2,つまり50%になります。
表=1/2
裏=1/2
では、2回投げた時にはどうなるでしょうか?1回あたりの確率は変わらないのですが、出方が表か裏かの2通りから、以下の4通りになります。
表→表
表→裏
裏→表
裏→裏
それにともない、それぞれの確率は、
表→表=1/2×1/2=1/4
表→裏=1/2×1/2=1/4
裏→表=1/2×1/2=1/4
裏→裏=1/2×1/2=1/4
…といった感じになります。全部1/4ですね。もう1回コインを投げても良いのですが、パターンが増えて面倒になるので、とりあえずこの辺にしておきましょう。
さて、ここには、当たり前のようで、使いこなすと意外と便利な確率の性質があります。それは、全てのパターンの確率を合わせると、かならず1、つまり100%になるということです。上の例だと1/4が4つなので、足すと1になりますね。
この性質を使うと、例えば「少なくとも表が1回出る確率」なんかは楽に求めることができます。
まともにやるのであれば、
「えーっと、少なくとも1回だから、表は1回か2回出るはず…。表が2回出るパターンは、表→表で、これは1/4。そして表→裏も当てはまるから…」
といった感じです。
一方、全部足したら1になる事を使えば、
「1回も表が出ないのは、裏→裏の1/4のときだけ。で、全部足したら1になるはずだから、1-1/4=3/4だ!」
と求めることが出来ます。
まぁコインを投げるのが2回程度なら、どちらでやってもあまり変わらないでしょう。しかし、3回4回と、どんどんコインを投げる回数を増やされてしまうと、パターンを調べるのにも一苦労です。
「少なくとも1回表が出る」などの、当てはまるパターンの方がどう考えても多そうな確率は、1-(当てはまらない確率)で求めたほうが楽です。これを数学の用語で余事象の確率と言ったりします。なんとなくカッコよい響きなので、私は好きです。
なお、余事象についてもっと詳しく学びたい!という方は、以下のサイトを参照してみて下さい。
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さて、では本筋のガチャの話に戻りましょう。基本的にはコイン投げと同じです。ただし、コインの表裏が出る確率が等しく1/2であるのに対して、ガチャの当たりはそう甘くはありません。
例えば、ゲーム内で一番手に入れづらい最高レアの確率であれば、私の知っているゲームの中だと、1%~7%程度に設定されています。一番多いのは3%~5%くらいのイメージです。
では、とあるソシャゲをプレイし始めたAさんの事を想像してみて下さい。CMを見かけたAさんは、基本無料ということもあり、とりあえずそのゲームをダウンロードしてみました。
ソシャゲの市場規模は年々拡大していて、競争も激化しつづけています。そのゲームでは、新規プレイヤーを呼び込むため、「今始めると100連ガチャ回せる!」というキャンペーンをやっていました。いやぁ太っ腹ですね。単純換算で3万円くらいの価値はあるでしょう。
さて、チュートリアルを終えて、はれてガチャを回せるようになったAさん。手元には100回ガチャを回せるだけの石があり、最高レアの確率は3%です。
では、ここでAさんが、100回のうち、少なくとも1回最高レアを当てる確率を考えてみましょう。
まず、先程コインでやったのと同じ考え方をします。つまり、全部外しちゃう確率を最初に求めるという考え方ですね。
1回ガチャを回して外す確率は、97/100=0.97=97%
2回ガチャを回して外す確率は、97/100×97/100=9409/10000=0.9409≒94%
3回ガチャを回して外す確率は....
といった感じで、どんどんかける回数を増やしていけばOKです。ただ、流石に手作業で100回かけるのは大変なので、ここではGoogle先生に頼ることにしましょう。サイトの検索欄に数式を入れると、大体答えを返してくれます。(ちなみに、ここで入力する数式は0.97^100です。興味のある方は検索してみて下さい)
その答えは、0.04752...≒0.05=5%、すなわち、この確率を1から引いた95%がAさんが最高レアを少なくとも当てることが出来る確率となります。
100人同じようなプレイヤーが居た場合、95人は最高レアを当てることが出来るわけですね。Aさんもよほど運が悪くない限り最高レアを当てて、ホクホク顔になっていることでしょう。
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ただ、これで「当たるじゃん!ガチャ最高!」とはならないのがソシャゲの世知辛いところです。
基本無料のソシャゲは、課金してくれるユーザーを常に確保し続けないと、サービスを続けられません。では、気前良くガチャを回させてくれたソシャゲは、一体どこで儲けるのでしょう?
その答えが、アタリキャラとハズレキャラというアイデアです。ほとんどのソシャゲは、最高レアの中にも格差が存在します。このキャラはスゴく強いけれど、このキャラは最高レアだとは思えないほど弱い…といった感じですね。
この強さの差を感じさせるために、ソシャゲの運営は実に様々な手段を講じています。前のキャラより明らかに強いキャラを追加し続けたり、あるいはゲーム自体に難しいコンテンツを追加したりといった感じですね。
この辺りの調整が運営の手腕の見せ所だったりします。やりすぎると愛想をつかされるし、かといって必要性を感じないとガチャを回してくれませんし……
と、余計な話はここまでにしておいて、本題に戻りましょう。
最高レアに強弱があるということは、ゲームを始めたてで、特にこだわりのないAさんにとっては大した問題ではありませんでした。しかし、ある程度ゲームをプレイしていくうちに強いキャラが欲しくなってきます。少し考えた結果、Aさんは課金することを検討し始めました。
では、ここで次の計算です。Aさんは強い最高レアのキャラを手に入れるために、何回ガチャを回せばよいのでしょうか。
これを考えるために、Aさんのプレイしているソシャゲの能力バランスを仮定します。正直、ゲームによってまちまちなのですが、ここでは話をわかりやすくするために、最高レアのうち1/3がアタリだと考えることにしましょう。
仮定こそ増えましたが、計算自体は変わりません。当たりの確率が3%から1%になるだけです。ただ、Aさんは課金しているので、最初と比べて熱の入り方は段違いでしょうが……
さて、では少しずつ回す回数を増やしてみましょう。
1セット10連のゲームが多いので、最初は10回から回してみましょう。
これは、99/100×99/100×....99/100と、続けて10回かければOK。こちらも同じようにGoogle先生に計算してもらうと、0.9043...≒0.9、すなわち90%という数字になります。
Aさんが少なくとも1回強い最高レアのキャラを引く確率は、この確率を100%から引けばよいので、10%になります。数千円程度で当てられる人は、10人中1人くらい。Aさんもよほどの強運の持ち主でない限り、多分外しているでしょう。
ここからは同じ計算の繰り返しですので、当たる確率だけを示していきます。
20回:18%
30回:26%
50回:39%
70回:51%
100回:63%
150回:78%
200回:87%
と、大体こんな感じになります。ちょうど70回で10人中5人が当てます。100回回しても、実は10人のうち4人は外します。200回回せば87%当てられますが、逆に言うと、10人中1人くらいは外している人がいる、と考えたほうが自然です。
ということで、Aさんが強い最高レアキャラを当てるためには、
最低70回、できれば150回程度は回したい
という結論が出ます。
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と、計算の話はここで終わりです。お疲れ様でした。今回使ったデータは私がなんとなくのフィーリングで設定したものです。実在のゲームとは一切関係ないのでご了承下さい。
なお、自分が遊んでいるソーシャルゲームの確率が知りたい方は、実際に計算してみると良いでしょう。今はほぼ全てのゲームのガチャに確率が表記されています。
最高レアなら何でもよいのか、それとも特定のキャラを狙っているのかを考えて、当たりの確率を決めて、それを使って計算するだけです。
「そんなことを考えるのは面倒だ!」という方は、
1-p^n
上式のpに外れの確率、nに回す回数を代入して、Googleの検索欄に貼り付ければ手っ取り早く計算出来ます。なお、pには%表示ではなく、小数を代入するようにしましょう。
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ここからは余談。冒頭で脇に置いておいたガチャの是非についてです。個人的には、個々で判断するべきだと考えています……
というと、何の答えにもなっていないように思われてしまいそうなので、表現を変えましょう。「費やす時間やお金を考えて、他のケースと比較し、それでも課金したいと感じる」のであれば回しても良いと思います。
150回回すと仮定すると、多くのゲームでは5万円を超えてくるでしょう。当塾の位置する熊本県の最低賃金は時給762円(2019年3月14日現在)ですので、長くても66時間程度バイトをすれば稼げる額です。1日3時間働くと考えると22日、1日5時間働くと考えると14日程度でしょう。
ただし、これは確率が高い方にきちんと入ることができればの話です。上述したとおり、150回回しても22%の人は外しますし、200回回しても13%の人は外します。さらに血を吐く思いをして手に入れたキャラも、いずれは型落ち品になる可能性があります。また、サービスが終了すれば無になるのは言うまでもありません。
このように、費やす時間・お金、そして今後の予測、それらのお金を他に費やした場合に得られるであろうリターン。課金をしてガチャを回すのであれば、そこまで熟慮した上で実行に踏み切ることをオススメします。
逆に確実に当てるだけの資金源を安定して確保できない場合は、基本的に手を出さない方がよいでしょう。中途半端な額を費やして、欲しいものも手に入れられない。これが一番最悪のパターンですので。
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一つだけ確実に言えるのは、数字は嘘をつかないので、しっかりと数学を勉強しておいたほうが絶対に良いということです。確率と関係が深い統計は現実でも頻繁に使われていますが、中には首をひねるような怪しい使い方も少なくありません。(最近だと統計不正の問題が巷を騒がせていますね)
そういうものに騙されないためにも、特に確率はしっかりと勉強しておくことを勧めます。
以上、今や一般化して、触ったことすらない人は少ないと思われるソシャゲのガチャに関しての与太話でした。ここまで読んでくださってありがとうございます。次回もお楽しみに。
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