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映像やデザインは「見せる」だけじゃない! メディアデザインと芸術工学の世界

執筆者の写真: 熊本個別指導教室
熊本個別指導教室
7 分前
読了時間: 15分

 お世話になっております。

 YouTubeの動画、テレビCM、映画のCG、ゲームの映像、スマートフォンの画面。

 私たちは毎日のように、さまざまな映像やデザインに触れています。

 例えば、同じ内容を説明する場合でも、文字だけで説明するより、イラストや映像を使った方が分かりやすいことがあります。

 また、スマートフォンのアプリでも、ボタンの位置や色、画面の構成によって、使いやすさが大きく変わります。

 では、こうした映像やデザインは、どのような考え方によってつくられているのでしょうか。

 実は、映像やデザインを研究する学問は、美しい作品をつくることだけを目的としているわけではありません。

 「何を伝えるのか」「誰に伝えるのか」「どうすれば正しく伝わるのか」という問題も研究の対象になります。

 こうした分野と深く関係しているのが、「メディアデザイン」や「情報デザイン」、そして「芸術工学」と呼ばれる学問です。


■ メディアデザインとは?

 「メディア」という言葉を聞くと、テレビや新聞、インターネットなどを思い浮かべるかもしれません。

 しかし、メディアとは、情報を伝えるための手段や媒体を幅広く指す言葉です。

 例えば、ポスター、書籍、写真、映像、Webサイト、スマートフォンのアプリなども、情報を伝えるメディアとして考えることができます。

 さらに、情報を表示するディスプレイや、情報を処理するソフトウェアなども、メディアの仕組みに関係しています。

 こうしたメディアを利用して、情報を分かりやすく伝えたり、人と人とのコミュニケーションを生み出したりする方法を考えるのが、メディアデザインです。

 例えば、学校の文化祭を紹介するポスターを制作するとします。

 単に写真や文字を並べるだけでは、見た人に必要な情報が伝わるとは限りません。

 開催日時を最も目立たせた方がよいのか、文化祭の楽しさを伝える写真を大きく配置した方がよいのか。

 小学生や保護者に向けたポスターなのか、それとも高校生に向けたポスターなのかによっても、適切な表現は変わります。

 つまり、デザインには、見た目の美しさだけでなく、情報を整理し、相手に伝えるという役割があるのです。

 「きれいにつくること」と「相手に伝わるようにつくること」は、必ずしも同じではありません。

 この違いを考えることが、メディアデザインを理解する第一歩になります。


■ 映像やCGは、どのような学問につながる?

 映像制作やアニメーションに興味がある人にとって、特に関係が深いのが「映像表現」や「コンピュータグラフィックス(CG)」という分野です。

 映画やアニメーションでは、映像の構図、色彩、動き、編集、音楽など、さまざまな要素を組み合わせて作品を制作します。

 例えば、登場人物が緊張している場面を表現したいとします。

 人物の表情を大きく映すのか、あえて遠くから撮影するのか。

 明るい照明を使うのか、暗い影を強調するのか。

 カメラの位置や映像の切り替え方によって、見る人が受ける印象は変わります。

 このように、映像をどのように構成すれば意図した内容や感情が伝わるのかを考えることも、映像表現の研究です。

 一方、コンピュータグラフィックスでは、コンピュータを利用して画像や映像を生成します。

 例えば、3DCGで人物のキャラクターを制作する場合、立体的な形状をつくり、表面の色や質感を設定し、光の当たり方を計算します。

 そして、キャラクターの関節や体の動きを設定することで、アニメーションを制作します。

 このようなCGの技術には、数学や物理学も深く関係しています。

 物体を回転させたり、移動させたりする計算には、座標やベクトル、行列などが使われます。

 また、光の反射や影の表現には、光学的な考え方も関係しています。

 つまり、CGは芸術的な表現と、数学・情報科学などの技術が組み合わされた分野なのです。


■ 情報デザインとは? 美しさよりも大切なこと

 メディアデザインと深く関係する分野に「情報デザイン」があります。

 情報デザインとは、情報を整理し、利用する人が理解しやすい形にするためのデザインです。

 例えば、駅の案内表示を考えてみましょう。

 駅には、改札口、出口、乗り換え、トイレ、エレベーターなど、さまざまな案内が設置されています。

 もし、すべての案内が小さな文字だけで書かれていたら、初めて訪れた人は目的地を見つけにくいでしょう。

 そこで、案内する内容に応じて色や記号を使い分けたり、重要な情報を大きく表示したりします。

 また、外国から訪れた人にも分かるように、文字だけではなく、ピクトグラムと呼ばれる図記号を利用する場合もあります。

 こうしたデザインでは、文字の大きさ、配置、色彩、視線の動きなどを考慮する必要があります。

 さらに、色の見え方には個人差があるため、色だけで情報を区別するのではなく、形や文字も組み合わせる工夫が求められます。

 例えば、赤色と緑色だけで重要な情報を区別する場合、利用者によっては違いが分かりにくい可能性があります。

 そのため、色だけに頼らず、記号や説明文なども利用することが大切です。

 情報デザインでは、こうした人間の特性を理解しながら、誰にとっても使いやすく、分かりやすい情報の伝え方を考えます。

 デザインの良し悪しは、見た目の美しさだけでなく、必要な情報が正しく伝わるかどうかによっても判断されるのです。


■ スマートフォンの使いやすさもデザインの研究?

 ここで紹介したいのが「インタラクションデザイン」という分野です。

 インタラクションとは、人と機械、あるいは人とシステムとの間で行われる相互作用のことです。

 例えば、スマートフォンの画面に表示されたボタンを押すと、別の画面が開きます。

 写真を指で広げると拡大され、画面を横に動かすと次の写真が表示されます。

 こうした操作に対して、システムがどのように反応するのかを設計することも、インタラクションデザインです。

 ここでは「UI」と「UX」という言葉も重要になります。

 UIは「User Interface(ユーザーインターフェース)」の略で、人が機械やシステムを操作するための接点を指します。

 スマートフォンのボタンやメニュー、文字入力画面などが、その例です。

 一方、UXは「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略で、製品やサービスを利用することで得られる体験を意味します。

 例えば、アプリの画面が美しくても、必要な情報がなかなか見つからなかったり、操作のたびに迷ってしまったりするのであれば、使いやすいとはいえません。

 反対に、初めて使う人でも直感的に操作でき、目的を簡単に達成できるアプリは、良い利用体験につながる可能性があります。

 つまり、アプリの開発では、プログラムを正しく動かすだけではなく、人がどのように感じ、どのように操作するのかを考えることも重要なのです。

 このような人間とコンピュータの関係を研究する分野は、「HCI(Human-Computer Interaction)」とも呼ばれています。


■ 人間の心理学も必要になる?

 映像やデザインの研究では、人間の心理や認知の仕組みも重要になります。

 例えば、同じ画像でも、色の組み合わせや周囲の明るさによって、実際とは異なる色に見えることがあります。

 また、図形の配置や背景によって、大きさや形、動きなどの感じ方が変わることもあります。

 こうした現象の一つが「錯視」です。

 錯視とは、目から入った情報を脳が処理する際に、実際の物理的な状態とは異なるように知覚する現象です。

 これは単なる目の錯覚として片づけられるものではなく、人間が視覚情報をどのように処理しているのかを理解するための重要な研究対象です。

 例えば、映像の中で物体が動いているように見える仕組みや、立体的な映像に奥行きを感じる仕組みにも、人間の視覚の特性が関わっています。

 また、広告やWebサイトのデザインでは、人がどこに注目し、どのような順番で情報を読むのかを考えることもあります。

 こうした研究では、心理学の知識に加えて、実験やデータ分析の方法が利用される場合もあります。

 つまり、メディアデザインは、芸術的な感性だけでなく、人間の感じ方や行動を科学的に理解することとも深く関係しているのです。


■ VRやプロジェクションマッピングも研究対象?

 映像やCGの技術は、映画やテレビだけで利用されるものではありません。

 例えば、VR(仮想現実)は、コンピュータによってつくられた仮想空間を体験する技術です。

 専用の機器を装着すると、自分の周囲に仮想的な空間が広がっているように感じられます。

 また、AR(拡張現実)は、現実の風景に文字や画像、CGなどの情報を重ねて表示する技術です。

 スマートフォンのカメラを通して、現実の場所に仮想的なキャラクターや案内情報を表示する仕組みなどが、その例です。

 さらに、建物や立体物の表面に映像を投影する「プロジェクションマッピング」という表現方法もあります。

 建物の形状に合わせて映像を制作することで、実際の建物が動いたり、形を変えたりしているように見せることができます。

 こうした技術には、映像制作だけでなく、コンピュータによる画像処理や空間の計測、投影位置の計算なども関係しています。

 また、見る人がどのような体験をするのかという視点も重要です。

 美しい映像をつくるだけでなく、驚きや感動をどのように生み出すのか、空間全体をどのように演出するのかも研究の対象になります。

 芸術的な表現と情報技術を組み合わせることで、これまでにない新しい体験をつくり出そうとしているのです。


■ AIによって、映像やデザインの学びは変わる?

 近年、生成AIによって画像や動画を制作する技術が急速に発展しています。

 文章で指示を入力するだけで、イラストや映像を生成できるようになってきました。

 では、これからは映像制作やデザインの技術を学ぶ必要がなくなるのでしょうか。

 そうとは限りません。

 例えば、AIによって美しい画像を生成できたとしても、その画像が目的に合っているとは限りません。

 誰に何を伝えたいのか、どのような印象を与えたいのか、情報が正確に伝わるのかといった問題は、依然として重要です。

 また、生成された画像や映像には、実際には存在しない情報が含まれることもあります。

 そのため、事実に基づいた表現になっているか、ほかの人の著作物や権利を侵害していないか、誤解を与える表現になっていないかといった点にも注意が必要です。

 さらに、AIが生成したものを利用する場合でも、作品全体の構成を考え、必要に応じて修正し、目的に合った形に仕上げる力が求められます。

 何をつくるべきなのか、なぜその表現を選ぶのか、見る人にどのような影響を与えるのか。

 こうした問いを考えることも、メディアデザインの重要な役割なのです。


■ 九州大学のメディアデザインコースでは何を学ぶ?

 九州でこの分野を専門的に学べる大学の一つに、九州大学があります。

 九州大学の芸術工学部芸術工学科には「メディアデザインコース」が設けられています。

 このコースでは、「人をつなぐ、人に伝えるデザイン」をテーマに、主に3つの分野を学びます。

① メディア表現

 映像、CG、アニメーション、グラフィックデザインなど、情報や考えを表現するための方法を学びます。

② メディアインタラクション

 人と人、人と情報をつなぐための技術やシステムを学びます。プログラミングや情報処理なども関係します。

③ メディアコミュニケーション学

 情報を受け取る人間の心理や行動、社会や文化との関係などを学びます。

 特徴的なのは、これら3つの分野を組み合わせて学ぶことです。

 例えば、映像作品を制作する場合でも、単に映像を編集する技術だけを学ぶわけではありません。

 何を伝えるための映像なのか、どのような表現が効果的なのか、見る人はどのように受け取るのか、といった内容まで考えていきます。

 実際に、メディアデザインコースには「映像表現」「アニメーション表現」「情報デザイン」「メディアプログラミング」などの授業があります。

 「映像表現」の授業では、脚本、撮影、CG制作、編集などをグループで担当しながら、映像制作を実践的に学びます。

 また、「情報デザイン」の授業では、グラフィック表現やレイアウト、Webデザインなどの基礎を学びます。

 さらに、研究室では、画像処理、視覚心理学、色彩科学、映像コンテンツデザイン、プロジェクションマッピングなど、多様な研究が行われています。

 例えば、建物などに映像を投影する拡張映像表現の研究や、コンピュータによる画像認識の研究もあります。

 そして、大学で学んだ知識や技術を生かし、卒業研究・制作に取り組みます。

 芸術的な表現だけでなく、科学的な分析や情報技術、社会との関わりまで学ぶことができる点が、このコースの特徴です。


■ 芸術大学と情報系の大学、何が違う?

 映像制作やデザインに興味がある場合、美術大学や芸術大学だけでなく、情報系・工学系の大学も進学先の候補になります。

 例えば、美術・芸術系の学科では、作品制作や造形表現、芸術理論などに重点を置く場合があります。

 一方、情報系の学科では、CGを生成するためのプログラミングや画像処理、コンピュータによる情報の分析などに重点を置く場合があります。

 そして、芸術工学系の学科では、芸術的な表現と科学・工学の知識を組み合わせて学ぶ場合があります。

 ただし、これらはあくまで大まかな傾向です。

 美術大学でもプログラミングやデジタル技術を学べる場合がありますし、情報系の大学でも映像制作やメディアアートを研究している場合があります。

 そのため、学部や学科の名前だけで判断することはできません。

 例えば、ゲームに関わる仕事に興味があっても、キャラクターをデザインしたい人と、ゲームの映像を描画するプログラムを開発したい人では、必要になる専門知識が異なります。

 映画の制作に興味がある場合でも、監督や映像編集を目指すのか、CGや映像処理の技術開発を目指すのかによって、学びたい内容は変わります。

 「どのような作品をつくりたいのか」だけでなく、「その作品のどの部分に関わりたいのか」を考えることが大切です。


■ メディアデザインに向いているのは、どんな人?

 メディアデザインというと、絵を描くことが得意な人や、芸術的な才能がある人だけが学ぶ分野だと思うかもしれません。

 しかし、実際にはさまざまな興味が入り口になります。

 例えば、動画編集が好きな人、写真を撮ることが好きな人、イラストやアニメーションを制作したい人などです。

 また、Webサイトの使いやすさを考えることが好きな人や、人間が映像をどのように感じるのかに興味がある人にも関係する分野です。

 そして、大学で学ぶ際には、芸術的な感性だけでなく、論理的に考える力も重要になります。

 CGや画像処理の技術を研究する場合には、数学やプログラミングが必要になります。

 人間の視覚や心理を研究する場合には、実験や統計学の知識が役立ちます。

 また、制作した作品が見る人にどのような影響を与えるのかを考えるためには、心理学や社会学などの知識も関係してきます。

 つまり、メディアデザインは、芸術、情報科学、人文・社会科学が交わる学問なのです。

 絵が得意なことは一つの強みになりますが、それだけが必要な能力ではありません。

 「どうすれば相手に伝わるのか」「どうすれば人が使いやすくなるのか」と考えることが好きな人にとっても、魅力的な分野といえるでしょう。


■ 将来は、どのような仕事につながる?

 メディアデザインを学んだ人の進路は、映像や広告の業界だけに限られません。

 例えば、映像制作会社で映像編集やCG制作に携わる仕事があります。

 ゲーム業界では、キャラクターや背景の制作、映像演出、ユーザーインターフェースの設計などに関わることができます。

 Webサービスやアプリの開発では、画面の構成や操作方法を考えるUIデザイナー、利用者の体験を設計するUXデザイナーなどの仕事があります。

 また、広告や出版、放送、Web制作、デジタルコンテンツ開発など、さまざまな分野で知識を生かすことができます。

 研究の方向へ進む場合には、画像処理やコンピュータグラフィックス、人間の視覚や心理、インタラクションなどの研究者を目指す道もあります。

 ただし、希望する仕事によって、大学で身につけるべき技術や制作経験は異なります。

 進学先を調べる際には、卒業生の進路だけでなく、大学で制作できる作品や、研究室で扱っているテーマにも注目してみましょう。


■ 「情報系に進みたい」の、その先を考えよう

 これまで、情報系の学問として、ソフトウェア工学、データサイエンス、情報通信工学、ロボット工学などを紹介してきました。

 ソフトウェア工学は、アプリやシステムを設計・開発するための学問です。

 データサイエンスは、データから特徴や規則性を見つけ、課題解決につなげる学問です。

 情報通信工学は、情報を正確かつ安全に届けるための通信技術を研究する学問です。

 ロボット工学は、コンピュータやセンサーを利用して、実際の機械を動かす技術を研究する学問です。

 そして今回紹介したメディアデザインは、映像や情報技術などを利用して、人に情報を伝えたり、新しい体験を生み出したりする方法を考える学問です。

 もちろん、これらの学問は互いに関係しています。

 例えば、スマートフォンの学習アプリを開発する場合、プログラムをつくるためにはソフトウェア工学が関係します。

 学習記録を分析するためには、データサイエンスが役立ちます。

 安全に情報をやり取りするためには、情報通信やセキュリティの技術が必要です。

 そして、生徒が理解しやすい画面や、学習内容が伝わる映像を制作するためには、メディアデザインの知識が役立ちます。

 このように、情報系の学問は、さまざまな専門分野が組み合わされることで、社会の中で活用されています。

 「情報に関わる仕事がしたい」という希望があっても、その先には非常に多くの選択肢があります。

 コンピュータの仕組みを研究したいのか。

 データから新しい発見をしたいのか。

 ロボットなどの機械を動かしたいのか。

 それとも、映像やデザインを通じて、人に何かを伝えたり、新しい体験を生み出したりしたいのか。

 大学選びでは、「情報系」という大きな枠だけで考えるのではなく、自分が情報を使って何を実現したいのかを考えてみましょう。

 普段楽しんでいる映像やゲーム、何気なく使っているアプリの画面も、大学で学びたい分野を見つけるきっかけになるかもしれません。


 
 
 

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